SS「アゲハ蝶」

586

アゲハ蝶

作詞:ハルイチ 作曲/編曲:ak.homma

ひらりひらりと舞い遊ぶように
姿見せたアゲハ蝶
夏の夜の真ん中月の下

暑い夏の海沿いの街
少女は一人佇んでいた
潮風をその身に浴びながら
ただただ遠くを見つめていた

喜びとしてのイエロー
憂いを帯びたブルーに
世の果てに似ている漆黒の羽

少女はある日出会いを果たす
無愛想で黒い服の旅人
あたかもそれは
行く当て無く彷徨う
漆黒の羽持つカラスのよう

旅人に尋ねてみた どこまで行くのかと
いつになれば終えるのかと

少女は旅人に尋ねた
どうして旅をしているの
どうすれば旅は終わるの

旅人は答えた「終わりなどは無いさ」
終わらせることは出来るけど

旅人は少女に言った
「この空に少女が囚われている」
「少女を解き放つために、あてもない旅を続けている」
「目的が達せられた時」
「この旅は終わる」

そう じゃあ お気をつけてと
見送ったのはずっと前で

きっと遠い昔にも
同じやり取りがあったのだろう
少女と旅人の他愛もない会話
何度も何度も繰り返される
他愛もない会話

此処に今だ還らない
彼が僕自身だと気付いたのは今更になってだった

遠い昔に見た光景
少女と話す旅人の姿
記憶を探れば探るほど
カラスの羽のような漆黒に
深く暗く沈んでゆく

あなたに会えたそれだけでよかった
世界に光が満ちた

少女の心に歓喜が満ちた
暗闇に差し込んだ一条の光
見ず知らずの旅人となら
呪われたこの身も関係なく
ただ楽しいだけの関係でいられるだろう

毎日見る夢
空の夢
そこの私は泣いていて
ただ悲しくて泣いていて
その中に誰かがいてくれたら
誰かがいてくれるだけでいいから
泣き止むことができたのに
また笑うことができたのに

夢で会えるだけでよかったのに

誰かの代わりに見る夢
悲しい夢
その夢の中で
誰かに会うことができる
会いたい人に
会うことができる
ただ、それだけでよかったのに

愛されたいと願ってしまった
世界が表情を変えた

いつも少女は独りぼっち
愛されたいと願うことすら
世界は許してくれない
すべてが少女を壊していく


悲しみ



無限
記憶

すべてが少女を蝕んでいく

世の果てでは空と海が混じる

いつかきっと
空の上の私が
海で遊べる日が来る
だからそのために
私は夢を見る
海の私
空の私
それが一つに交わる日まで
私は夢を見る

 

※このSSは、水晶宮夢源さん作「ゴーゴー蟲娘」に影響を受けて執筆しました。

 

 

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体名・事件とは、一切関係ありません。

※でも、あなたがこの物語を読んで心に感じたもの、残ったものがあれば、それは紛れも無い、ノンフィクションなものです。

Thanks for reading.

Written by 586